プロ野球にまつわる「著作権」「肖像権」を解説

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スポーツビジネス
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スポーツビジネスは「権利」のビジネスともいえる、というのは別の記事でも説明させていただきました。

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「権利」といってもさまざまありますが、なかでも「著作権」の管理、あるいは著作権をどう活用していくかがビジネス的な観点でも大きな影響を及ぼします。今回は、プロ野球と著作権にまつわる内容を解説してみたいと思います。

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プロ野球にはどんな「著作権」「肖像権」などの権利があるか

プロ野球の球団にはさまざまな「アセット」があります。その大元はやはり「選手」で、この選手の「肖像権」は基本的にプロ野球球団に所属しているようです。もちろん、球団のロゴなどの著作権も球団に所属しています。

「統一契約書様式」

第16条 (写真と出演) 球団が指示する場合、選手は写真、映画、テレビジョンに撮影されることを承諾する。なお、選手はこのような写真出演等にかんする肖像権、著作権等のすべてが球団に属し、また球団が宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても、異議を申し立てないことを承認する。
なおこれによって球団が金銭の利益を受けるとき、選手は適当な分配金を受けることができる。さらに選手は球団の承諾なく、公衆の面前に出演し、ラジオ、テレビジョンのプログラムに参加し、写真の撮影を認め、新聞雑誌の記事を書き、これを後援し、また商品の広告に関与しないことを承諾する

http://jpbpa.net/up_pdf/1523253119-909280.pdf

ここで、ロゴなどの著作権がプロ野球球団が保有していることはスムーズに理解できるかもしれませんが、一方で選手の肖像権が「選手」ではなく「球団」に属することに対して不思議に思う方も多いかもしれません。

これは、選手自身が「球団のユニフォーム等を着用したうえで」「球団の選手として」メディア等に出演する場合は球団を通す必要がある一方、球団は選手の肖像を広告宣伝あるいは営利目的で自由に活用できることになります。試合映像などもそうですが、たとえば選手を活用したさまざまなグッズはこの取り決めがあって柔軟に展開できている一方、グッズの収入などが合理的に選手に配分されているとはいえないのかもしれません。

実際に、この点に関しては選手会側も不満を持っていたようで、一昔前には裁判にもなっています。しかし、結果として最高裁がプロ野球球団と選手間の肖像権の取り決め内容を認めた形になりました。

www.nikkei.com

ファンが球場で撮影した写真や動画は「肖像権」侵害になる?気になるSNSでの投稿は?

国民全員が「発信者」となりうるSNS時代において、プロ野球でも球場・スタジアムでの熱気をファンが撮影してSNSに投稿するケースがよくあります。これらのコンテンツは球団が管理する「肖像権」の侵害にあたらないのでしょうか?

結論からいうと、非常にグレーな部分といえます。基本的には営利目的での投稿とはいえず、実質的にファンによる常識的な範囲でのSNSやブログ等への投稿は問題になっていません。ただし、肖像権の侵害にあたらないことをHP等で明示している球団はほとんどなく、あえて「グレー」にしていると推察できます。肖像権の取り締まりが重要とはいえ、特にSNSへの投稿を制限すると新規ファンの獲得にも影響が出るでしょう。

権利に密接に関わる「統一契約書」

肖像権に関する記載で紹介した「統一契約書」ですが、これは全てのプロ野球選手が球団を問わず締結することになる共通の契約です。16条以外にも、年俸のことやトレードの話、遠征費用のことなどが定められており、興味のある方は覗いてみると面白いと思います。

この「統一契約」という考え方は、プロ野球以後に設立されたJリーグやBリーグにおいても取り入れられているようですね。

https://www.bleague.jp/about/pdf/r-33.pdf

https://www.jleague.jp/docs/aboutj/regulation/2019_regulation.pdf

なぜ、「著作権」「肖像権」の取り決めが重要か

ここまでの部分は結果的に「肖像権」に寄った話になってしまいましたが、ここからは「著作権」も含め、なぜこのような「取り決め」が重要か、という話です。

これは、ひとことでいえば著作権や肖像権の取り決めによって、流通を適切にコントロールすることであるといえます。極端な例ですが、とにかく選手や球団のことがどんな形でもいいから世の中に広まればよい、という考え方で著作権や肖像権を開放してしまうと、営利目的で選手の画像や動画を掲載する個人が増えて需給のバランスが崩れることもありえるでしょう。結果的に、ファンの不満や、球団ひいては選手の取り分も侵される可能性もあります。

あるいは、肖像権を球団の管理ではなく、選手に委ねているとどうなるでしょうか。メディアや、視聴率やアクセス数に追われて選手を「食い物」にした企画を実施することすらありますが、球団を通すことでブランドイメージにそぐわない企画を防ぐことができていました。しかし、もし選手個人の判断になれば、メディアに載せられて本来は望ましくない形でのメディア露出が行われるリスクが高くなります。

「放映権」と「著作権」

詳細は別記事に譲りますが、スポーツビジネスにおいて映像コンテンツは非常に重要です。その根本にあるのが「放映権」ですが、放映権そのものと、その映像にまつわる「著作権」の取り扱いが球団やクラブのリーチできる範囲や収益に大きく影響します。

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プロ野球に関する「著作権」をうまく活用したケース

最後に、筆者がプロ野球に関して「著作権」をうまく活用していると感じるケースを紹介します。それは「パ・リーグTV」の例なのですが、特にコロナでの自粛期間で「著作権」の妙を感じました。

そもそも、パ・リーグはざっくりいえばパ・リーグ6球団主催の試合の放映権を管理しており、リーグとして束ねています。どんなメリットがあるかといえば、パ・リーグTVにいけば、過去の映像も含め全球団の試合映像を楽しむことができる点。自粛期間は、やはり過去の名シーンなどが楽しみのひとつとなっていましたが、パ・リーグTVはYoutube等でこれらのコンテンツを流していましたね。これは、リーグ全体で管理できているからこそホームチームに関係なくコンテンツを保有できていたということになります。

さらにいえば、元々の中継映像からさまざまな切り口で切り出し、編集した映像(守備の特集や過去の名場面など)を出せるのも「著作権」をうまく管理できているからといえます。

パ・リーグTVと各球団は、この「著作権」においてWin-Winの形になっています。ファンの方は、好きなチームのSNSを見ていると思いますが、ホームゲームだけでなく、アウェーの試合においてもハイライトなどの映像コンテンツが使われていることに気づくのではないでしょうか。パ・リーグTVだけが有効にコンテンツを活用するのではなく、各球団にも配分されており、著作権の活用がうまくいっている事例でしょう。

スポーツビジネスは権利が重要なビジネス

スポーツビジネスに「権利」はつきものです。今回は、そのなかでも「著作権」や「肖像権」にフォーカスしましたが、たとえばスポンサーシップにおいても、契約のなかでどのような権利を有していて、それをどう活用するか、がポイントになります。

この観点で好きなスポーツやリーグに注目すると面白いのではないでしょうか。

参考にした書籍

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