コロナ以前から、スポーツ産業でも様々な分野でデジタル化が進んでいましたが、コロナで試合開催や観客動員に制限がかかるなか、デジタル化・DXが加速しています。
本記事では、スポーツ産業におけるデジタル化を一気にまとめます。
スポーツ産業全般については以下の記事でまとめているので、こちらも合わせてご覧ください。
スポーツ産業とは?成長性が期待されるスポーツ産業 – スポビズ研究所
スポーツ産業・デジタル化の大まかな流れ
まずは、デジタル化・DXの大まかな流れから。
日本で最もメジャーなプロスポーツであるプロ野球を例に取ると、インターネット普及とともに2000年代には各球団のWebサイトが立ち上がり、ファンとの接点がテレビやスタジアムといったアナログだけでなく、デジタルな接点もできました。
2010年代には、日本全体でもSNSの普及が一気に進み、プロ野球チームとしては活用が始まるまでに時間はかかりましたが、今では各球団が積極的にSNSを活用し、ファンのエンゲージメントを高めています。
また、同じくらいのタイミングでチケット販売でも電子チケットの導入が徐々に広がっています。
近年ではスポーツ中継もTV中心からネット中心に変わってきています。DAZNやパ・リーグTVを中心に、OTTサービスが広がったことで、好きなチームのあらゆる試合を家庭内でチャンネル争いすることなく楽しめるようになっています。
2020年代からは、NFT(非代替性トークン)の活用もスポーツ産業全体としては広がり始めています。スポーツが持つ「リアルタイム性」「メモリアル性」といった特徴と非常に相性が良く、コロナで苦しいビジネス環境のなか、注目されている技術です。
スポーツ産業の各分野におけるデジタル化
ここからは、スポーツ産業のコアとなる各領域におけるデジタル化・DXについて詳しくご紹介します。
ファンとの接点・ダイレクト課金
ファンとの接点のデジタル化という観点では、従来のスタジアムに加えてデジタル接点でファンとつながる時間や深さが増大しているといえます。
試合や練習の裏側や選手の素顔などもコンテンツ化することで、試合観戦時以外でのつながりをファンは感じることができます。コロナで試合観戦自体が制限されるなか、SNS活用の重要性が高まっています。
また、よりビジネス観点ではスポーツ産業の新しい潮流として「ダイレクト課金」が挙げられます。よりコアなファンに向けたチームや選手のコンテンツをサブスクリプションサービスとして配信している球団やクラブも増えています。
このようなサービスもデジタル化のひとつとして捉えられるでしょう。
チケット販売・入場管理
大きくは電子チケットの普及が挙げられます。チケットを紛失するリスクもなくなり、顧客情報も取得しやすくなり、マーケティングに活用できます。入場管理も電子チケットであれば人件費を削減でき、実際にどの顧客が来場したかを把握できます。
また、インターネット上で販売することで、座席からの眺めのイメージを確認したうえで、座席指定も可能になってきています。これもデジタル化のひとつといえるでしょう。
さらには、「ダイナミックプライシング」も顕著なデジタル化の例です。従来のアナログな販売であれば、各チャネルでの販売状況をリアルタイムで一元管理できませんが、デジタルの活用により、全チャネルでの販売状況やその他の先行情報からリアルタイムでのプライシングが可能になってきています。
ライブ中継
冒頭でも触れたインターネットでのスポーツ中継はスポーツ産業のデジタル化の大きな事例となっています。地上波などの限られたチャンネル数では見られなかった試合も今では当たり前のように観戦できます。
さらに、5Gを通じて映像自体もリッチになっています。いわゆる「マルチアングル」として、自分の見たいアングルを指定したり、複数のアングルで同時に楽しむこともデジタルならではの楽しみ方です。
グッズ販売
グッズの製品自体というより、売り方がデジタル化によって大きく変化しています。ECの活用により、見込み生産だけでなく「受注生産」が可能になりました。つまり、注文を取るだけ取っておき、後日配送で対応できます。
これにより、特にメモリアルなグッズをリスクヘッジしながら攻めた販売が可能です。予めグッズのデザインだけ制作しておき、記録達成の瞬間から販売を開始し、ファンの熱が高い状態で多く注文を受けられるのです。
さらに、最近注目されているのがNFTの活用です。メモリアル性をNFTによって保証し、価値をつけることで新しい収益源としても注目されています。NBAの高額取引が以前ニュースになりましたが、プロ野球でもNFTの導入が始まっています。
人気急騰中のデジタルトレカ「NBA Top Shot」の高額取引ランキングトップ5 | バスケットボールキング
西武ライオンズとパシフィックリーグマーケティング、日本プロ野球界初のNFT商品を9月7日(火)より販売開始|パシフィックリーグマーケティング株式会社のプレスリリース
パフォーマンス分析/データ活用
スポーツ産業のデジタル化は、ビジネス面だけではありません。選手にも大きな恩恵があります。
「トラックマン」といった形でよく紹介されていますが、選手の動きを綿密に測定し、パフォーマンス改善につなげやすくなりました。あらゆる動きが数値化されることで、課題を発見しやすくなっています。
また、相手選手やチームの分析にもデータ分析が活用され、プロ野球チームでも「戦略室」といった部隊が設置されるようになっています。
これらのデータは、試合中継などでコンテンツ化することも可能で、コアなファンにとっては楽しめるデータも多くなっています。
デジタル化がスポーツ産業を救う?
言うまでもなく、コロナの影響でスポーツ産業全般が大きな打撃を受けています。ファンの行動も制限されるなか、各球団やクラブが探り探りで新たなサービスを模索しています。
従来のチケットを中心とした収入にメドがつかないなか、デジタル化の潮流をうまく活かし、デジタルサービスの成否が今後のスポーツ産業の大きな分かれ目となるかもしれません。
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