スポーツ産業とは?成長性が期待されるスポーツ産業

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「スポーツ産業」と言われてどのような産業か、明確にイメージがつきますでしょうか?多くの人がプロ野球やJリーグなどの球団やクラブの経営などをイメージされると思いますが、実はスポーツ産業にはさまざまな領域があります。

本記事では、そんなスポーツ産業について特徴や課題を解説していきます。

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スポーツ産業とは?

スポーツ産業を一言で表すのは難しいですが、あえて言うのであればスポーツが何らかの形で関わっているビジネスであれば「スポーツ産業」に当てはまります。市場規模(2012年のデータ)とともに例を挙げると

  • 公営ギャンブル:約4兆円
  • 施設運営:約2兆円
  • 流通小売(の売上):約1.7兆円
  • スポーツ教育:約1.5兆円
  • 放送、エンタメ:約0.4兆円
  • スポーツ興行収入:約0.3兆円

がスポーツ産業の主な領域になります。

参照元:

15兆円を目指すスポーツ市場、何を増やすのか? (1/3) – ITmedia ビジネスオンライン

スポーツ産業全体の市場規模は約11.4兆円になるのですが、特筆すべきは「スポーツ興行収入」が占める割合です。

0.3/11.4=約2.6%

勘の鋭い方はお気づきかと思いますが、「スポーツ興行収入」にはいわゆるプロスポーツのチケット料金など、まさに試合や大会といったスポーツ産業の根源的な価値に対して直接的に支払われた対価です。しかし、これがスポーツ産業全体に占める割合は、非常に低いのです。

では、2.6%しかないからといってスポーツ産業における位置づけが低いのか、といえば決してそんなことはありません。このコアな2.6%があるからこそ、その他97.4%の価値が担保されるといえるでしょう。

試合の興行価値が高いからこそ、そこから派生する施設運営や小売、放送といった事業が成り立つのです。

「スポーツ産業とは?」概念図

スポーツ産業の変遷

スポーツが「スポーツ産業」として広がってきた背景として、「メディア」との関係は切っても切り離せません。スポーツ産業は、メディアとともに成長してきたといっても過言ではないでしょう。

理由としては、スポーツは注目度が高く、当時の新聞社はスポーツの結果などを記事にするとたくさん新聞が売れたり、テレビ局としても視聴率を稼ぐことができました。ましてや、テレビ放送であれば「生中継」である分、「編集」が不要なため、トラブルなく放送できればコスパが良かったのです。

別記事でも触れていますが、「ライブ性」こそがスポーツ産業の価値であり、録画によるCM飛ばしがされにくいという点でもスポーツの放送には大きな価値がありました。

メディアとともに発展してきたスポーツ産業の次のステージは、「スポンサーシップ」です。スポンサーシップというより、「広告」「宣伝」といっても差し支えないでしょう。特に、1984年のロサンゼルス・オリンピックを機にスポーツの注目度の高さを活かした「スポーツ産業化」が一気に進みました。

しかし、特に日本では地上波テレビ離れが進み、放映権を中心としたスポーツ産業の限界が露呈してきました。巨人戦の放映権が「1試合1億円」といわれていた時代もありましたが、今やそれに依存したビジネスモデルは成り立ちません。

不景気により親会社依存のビジネスモデルの限界も露呈し、スポーツ産業において各球団・クラブが自身で収益化する必要に迫られます。メディア依存を脱却し、ファンが「試合」というスポーツ産業のコアとなる「商品」を最大限楽しめるようスタジアムや演出、イベントなどを充実化していくようになります。

「試合」という結果をコントロールできない商品から派生するスタジアムでの体験、たとえば試合前の時間を楽しむボールパーク的な要素やバラエティ豊富でオリジナルな飲食やグッズ、試合合間のイベント企画などに注力し、ファンがスタジアムで過ごす時間と、それに伴う消費を伸ばしていきました。

スポーツ産業にも新たな領域がたくさんある

上記で挙げたスポーツ産業の領域例は代表的なものですが、近年はさまざまなテクノロジーやスポーツ産業とのかけ合わせが広がっており、異業種からのスポーツ産業への参入が大幅に増加しています。

代表的なのが通信(5G)を始めとしたIT領域とスポーツ産業の組み合わせです。

特に通信キャリア各社は、5G技術を活かした試合中継のコンテンツ充実化に躍起になっており、コロナの影響でスタジアム観戦が限られるなか、スマートフォンやタブレットなどでどうファンに試合を楽しんでもらえるか、新しい試みがたくさんあります。

そのほかにも、「スポーツツーリズム」という言葉に代表されるようにスポーツは「する」ものとしても「みる」ものとしても「観光」と非常に相性が良く、スポーツ産業とかけ合わせたからこそ提供できるプランやパッケージが増えています。

さらには、スポーツ産業と健康産業の組み合わせも注目すべきところでしょう。

「スポーツ」と「健康」はそもそも近い位置にある産業ですが、今後少子高齢化が見込まれる日本において「健康」の重要性は高まっており、その健康に対して身体面・精神面両方で支えることができるのが「スポーツ」や「スポーツ産業」といえるでしょう。

このような、スポーツ領域とのコラボは今後もたくさん出てくると思います。

ポイントは、スポーツ産業がさまざまな事業とシナジーを期待できるのが特徴である、ということ。「なぜスポーツ産業はさまざまな事業とシナジーが期待できるのか」という点は「スポーツマーケティング」という切り口で本ブログでも掘り下げているので、こちらもチェックしてみてください。

『スポーツマーケティングとは?』を徹底解説 – スポビズ研究所

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スポーツ産業への大きな期待

スポーツ産業は、日本のさまざまな産業のなかでも今後の成長性が大きく期待されている産業でもあります。

実際に、日本政府は2012年時点では約5.5兆円の市場規模であったスポーツ産業について、2025年には約15兆円まで拡大させる、という「日本再興戦略2016」を打ち出しています。

これは、2020年の東京オリンピックなども加味した数字であり、現状では達成が難しいところではありますが、これだけスポーツ産業が期待されているということです。

また、スポーツ産業における領域(スポーツ用品やIoT、スタジアム・アリーナなど)ごとに現状と目標数値が設定されており、具体的な計画として注目されています。

スポーツ産業15兆円

出典 スポーツ未来開拓会議資料

「スポーツ産業・15兆円時代」については、以下の著書もおすすめです。

長らく競技者(選手)のものだった日本のスポーツは、新しいステージを迎え、今後より人びとの暮らしに密着したものになる。すでに起こっている事例を挙げつつ、人・モノ・カネの動きの実際と予想される未来を、スポーツビジネスの最前線で活躍する著者が語る。

スポーツ産業の市場規模15兆円の達成に向けたポイント

約3倍にまで市場規模を拡大するのは、並大抵のことではありません。スポーツ庁が分野ごとの目標や計画も示していますが、そこから導き出される「15兆円達成のポイント」があります。

スポーツ産業・成長分野①:スタジアム・アリーナ

まずは、「スタジアム・アリーナ」の建設です。日本にはさまざまな競技場やスタジアムがありますが、その多くが「赤字」の状態で、事業として成立している「スタジアム・アリーナ」はあまりありません。

プロスポーツの「本拠地」となっていれば収益化しやすいのですが、プロスポーツクラブは無数にあるわけではありません。一方で、国体が各地で開催される際に競技場やスタジアムが新たに建設されてきた歴史もあり、マネタイズで苦しむ「スタジアム・アリーナ」がほとんどなのです。

そこで注目されているキーワードが「スマート・スタジアム」です。単に競技や試合を行ったり、それを観戦するだけの場所ではなく、会議室や幼稚園、ショッピングモールなども併設し、日常的に利用される「スタジアム・アリーナ」です。

「コスト」ではなく「レベニュー」を生み出す施設として、日常に溶け込み、さまざまな機能を有した「スマート・スタジアム」は、人口減少が見込まれる日本において期待されるべきものでしょう。

実際に「スマート・スタジアム」として実証実験が始まっている例もあり、今後に注目です。

関連書籍

2020年を契機として、スポーツを通じた国内経済・地域活性化への期待が高まっている。その牽引役と位置付けられているのが、スポーツ施設を核とし、公共機能や商業施設を併設した多機能複合型の施設「スマート・べニュー」だ。この構想の提案者でもある日本政策投資銀行が、一書にまとめて世に問う。

スポーツ産業・成長分野②:スポーツ経営の強化

各々は「スタジアム・アリーナ」ほどのインパクトはないかもしれませんが、各スポーツ団体の「経営力強化」もスポーツ産業の成長において外せない分野です。

たとえば、スポーツ産業の市場規模が大きいアメリカ(2017年に約58兆円)では、大学スポーツがビジネスとしても利益を生み出しており、それらがスポーツ産業の市場規模を支えている側面もあります。

一方、日本の大学スポーツはいわゆる「体育」的な要素もまだまだ根強く、「学生がスポーツで稼ぐ」ことに対するネガティブなイメージすら存在するようです。この流れに甘え、各競技団体が経営面・ビジネス面で取りこぼしている部分は非常に大きいのではないでしょうか。

逆にいえば、まだまだスポーツ産業における伸びしろがある部分でもあり、実際にUNIVASの設立など大学スポーツでは経営・運営を強化していく動きもあります。大学スポーツに限った話ではありませんが、各チーム・クラブ単位でビジネス面の努力を地道に行っていくことです。

プロ野球のいくつかの球団や、BリーグやJリーグのクラブでも、恒常的な赤字から黒字化に成功した事例もあり、ベンチマークにできる素材はたくさんあります。スポーツ産業の15兆円達成には、これらの努力は欠かせないでしょう。

www.itsportsbiz.work

スポーツ産業・成長分野③:スポーツベッティング

コロナの影響で、スタジアムに依存しない収益源が求められています。

ひとつの打開策として期待されているのが、「スポーツベッティング」の導入です。すでに宝くじに近いイメージの「スポーツくじ」はありますが、スポーツファンにとってはあまり魅力的な商品性ではありません。

今後予定されている法改正により、いわゆる「スポーツベッティング」に近いくじが導入される予定です。大きな市場規模が期待され、苦しいスポーツ産業の救世主となれるか、注目です。

www.itsportsbiz.work

日本特有の「体育」や「上下関係」とスポーツは切り離せない関係ではありましたが、一方でスポーツ産業は政府が公に打ち出した「再興戦略」でも挙げられているように、非常に成長性が高い産業でもあります。従来のイメージから「マネタイズ」がある意味避けられてきた部分も否めませんが、今後のスポーツ産業の成長に期待していきましょう。

スポーツ産業・成長分野④:DX(デジタルトランスフォーメーション)

①~③と重なる部分はありますが、スポーツ産業の様々な分野でDXの取り組みが進んでいます。コロナでそうせざるを得ない側面もありますが、DXを通じて新たなスポーツ観戦体験やビジネスモデルの創出が期待されています。

詳しくは以下の記事にもまとめています。

スポーツ産業のデジタル化・DXまとめ – スポビズ研究所

スポーツ産業に関するおすすめ動画

スポーツ産業を知るのにおすすめな動画を紹介します。

スポーツが社会のためにできること、産業としてのスポーツ


スポーツが社会のためにできること、産業としてのスポーツ

やや長い動画ですが、グロービスが開催するサミットでスポーツ産業について取り上げた回の動画です。地域との結びつきのなかで、スポーツ産業について多面的に語られています。地域に根差してスポーツ産業に携わっているスピーカーの方々が、それぞれの知見や経験をシェアしている回です。

近大発スポーツ産業が目指すもの~日本スポーツ収益性向上~


近大発スポーツ産業が目指すもの~日本スポーツ収益性向上~

こちらもやや長い動画ですが、近畿大学で行われた分科会を収録したものになります。スポーツ産業の現場で活躍されているゲストも交えながら、スポーツ産業が収益性を高め、成長していくうえで必要なことなどが議論されています。

合わせて読みたい

www.itsportsbiz.work

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