プロ野球の球団経営を徹底解剖

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スポーツビジネス
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スポーツビジネスに関する情報は、以前に比べると非常にオープンになっており、関心を抱いている人も増えている印象です。スポーツビジネスのなかでも、注目度が大きく、エンタメとしても市場規模が大きいプロ野球の「球団経営」の実態について迫っていきたいと思います。

参考書籍

日本のプロ野球を「(労働)経済学」の観点で捉え、年俸問題、キャリア問題、選手の権利問題、球団経営等について調査・分析。メジャーリーグとの比較分析も行う。新たな視点のプロ野球解説書とするとともに、日本のプロ野球をケーススタディとした経営、ビジネスの指南書にもなる書。

球団経営とは?

 

球団経営とは、文字通りプロ野球球団の経営です。かつて、球団経営の位置づけは「親会社の広告塔」としての役割が大きかったですが、球団経営自体は基本的に赤字でした。そこから、2004年の球団再編問題などを経て自立経営を目指すようになりました。景気的にも、球団経営が赤字垂れ流しで親会社から補填だけでは成り立たなくなってきていたのも関係しています。

スポーツという目立つ”商材”であること、メディア露出が多いことから知名度が高い一方で、球団経営は規模的に中小企業の経営に近いでしょう。売上の目安は100億円から200億円程度です。球団を取り巻く関係者やビジネスモデルをざっと可視化してみると、こんなイメージでしょう。

球団経営とは

「採用情報」から読み解く球団経営

とはいえ、私はスポーツ業界のなかに身を置いているわけではなく、内部情報をあまり知っているわけではありません。そこで、今回参考にするのはパ・リーグ6球団の「採用情報」です。最近あった「ドラフト会議」という「採用」の場を通じて各球団の状況や将来的な戦略が浮き彫りになっているのと同様に、ビジネス面つまり球団経営についても、ビジネスサイドの「採用情報」から、球団にはどのような仕事があり、どのような運営がなされているかが見えてくると考えます。

球団経営における事業についておさらい

具体的な求人情報をもとにした解説の前に、おさらいにはなりますが球団にはどのような事業があるか、大枠を説明します。

他の記事でも折に触れて解説はしていますが、スポーツビジネスでは主に4つの収益源があります。

・スタジアム

・ライセンス(グッズ)

・放映権(放送権)、メディア

・スポンサーシップ

これらの収益を最大化したり、シナジーを最大化したりするために、各球団でどのような仕事があるのか、見ていきましょう。また、ビジネスではなくフィールドサイドで球団を支える仕事もあります。

パ・リーグ6球団の求人情報(2020/10/28時点)から見える球団経営

福岡ソフトバンクホークス

チームとしても非常に強く、例年優勝争い、日本シリーズ進出を果たしているソフトバンクホークス。ビジネス面でも大きな成果を挙げており、売り上げは球界トップクラスです。そのソフトバンクホークスでは、

・社長室:会社ガバナンス方針の企画、管理やCSRなど

・広報室

-広報企画課:広報計画の立案推進、プレスリリースなど

-球団広報課:マスコミと選手・監督間の調整など

・球団統括本部:編成育成、チーム運営やチーム戦略

・事業統括本部

-新規事業推進本部:新規事業開発、インバウンド推進など

-野球事業推進本部:主催試合における興行運営など

-マーケティング本部:新商品や新サービスの企画立案、チケット販売分析など

-事業運営本部:球場内の飲食施設等の管理、イベント企画など

-営業本部:スポンサー営業やシーズンシートの販売、協賛プログラム企画運営

・ブランド推進本部:ブランド・メディア関連業務

などの求人があります。

福岡ソフトバンクホークス株式会社

千葉ロッテマリーンズ

熱狂的なファンが代名詞になっており、最近は経営において黒字化を達成した千葉ロッテ。掲載は終了していますが、dodaによると

・営業職:シーズンチケットやスタジアム広告、スポンサー獲得などの営業

・スタジアム管理:試合やイベント進行の管理

・ファンサービス企画:ファンサービスの企画立案、実行

・マーケティング:マーケティング、数値分析全般

株式会社千葉ロッテマリーンズの過去求人・採用情報/総合職(営業・スタジアム管理 ほか)/正社員採用 − 転職ならdoda(デューダ)

埼玉西武ライオンズ

 

強力打線が代名詞になっており、近年優勝争いに絡むことが多い西武ライオンズでは、以下のような求人情報がありました。

・広報:事業に関する取材対応、チームサイドの取材対応・情報発信

・スタジアム運営:主催試合におけるスタジアム内外の運営業務

・ファンクラブマネージャー候補:ファン拡大を目的とした業務全般

・ファンクラブ・チケット:ファンクラブやスタジアムの集客

・球団グッズ企画販売:オンライングッズ全般

・飲食企画運営:飲食全般の売り上げ向上を目的とした企画、テナント管理

・法人営業:スポンサー、イベント協賛などの獲得

・営業企画:商品設計

・地域コミュニティ活動:地域活性化のための企画運営、スクールとの連携など

・プロモーション企画制作のディレクション:オウンドメディアの運営

・イベントプロモーションのディレクション:イベント企画、ノベルティ制作など

・データ分析:マーケティング関連のデータ収集、分析

・デジタル企画・設計:アプリやMAなどデジタル関係全般

株式会社西武ライオンズ 求人一覧

東北楽天ゴールデンイーグルス

毎年のようにスタジアムがバージョンアップしている楽天イーグルス。そのボールパークやエンタメを楽しんでもらうために、どのような仕事があるのでしょうか。

・マーケティング本部:宣伝広告企画、Webサイトの運営、顧客情報分析、商品設計など

・コーポレート本部:人事・総務・法務・財務、興行時のイベント運営など

・事業本部:グッズの企画制作・販売管理、施設の保守管理、飲食店舗出店企画など

・営業本部:スポンサー・放映権・年間シートなどのセールス

・Team Management室:ファンとチームのリレーション強化施策の企画・運営など

・チーム統括本部:チーム強化戦略立案・業務推進、チーム運営管理、メディア調整など

株式会社楽天野球団(東北楽天ゴールデンイーグルス)/総合職/勤務地:仙台市宮城野区の求人情報 - 転職ならdoda(デューダ)

北海道日本ハムファイターズ

チーム・ビジネスともに独自の戦略をとっている印象がある日本ハムファイターズ。新スタジアムが期待されているなか、「募集職種」では「全般業務」とありますが、例を挙げると

・ファンクラブ入会促進

・チケット販売、管理

・オフィシャルグッズ企画、制作、販売

・法人営業(シーズンシート、スポンサー、ライセンス)

・主催試合のイベント企画運営

・映像制作、プロモーション

採用情報|北海道日本ハムファイターズ

オリックス・バファローズ

成績の低迷が続くオリックス。関西圏では阪神もいるため、ビジネス面でも工夫が求められます。総合職の内容を見てみると、

・企画/マーケティング:ファンの獲得、来場促進の戦略、マーケティング

・チケット/ファンクラブ:チケット販売促進、ファンクラブ運営

・スポンサー営業:スポンサーやシーズンシートの顧客獲得

・球団グッズ企画:グッズ全般を担当

球団経営における収支イメージ

 

球団の経営情報はあまりオープンになっていないため、正確な数字を記載することは難しいのですが、コロナ禍で球団経営に求められる視点などが解説されたニュースでは、元横浜DeNAベイスターズ社長の池田氏がイメージを説明してくれています。それによると、

収入が100億円とすると

・チケット収入、グッズ収入、飲食で合計60億円

・放映権料で約15億円

・スポンサー料で約20億円

・その他で5億円

のような内訳になるようです。

プロ野球 前例なきシーズン開幕へ ~“ウィズコロナ”の模索~ – NHK クローズアップ現代+

費用面で参考になるのは、読売巨人軍が自社のビジネスモデルについて説明している内容です。内訳は球団によって異なりますが、項目としては下記のイメージで間違いないでしょう。

読売巨人軍のビジネスモデル|株式会社読売巨人軍採用サイト

「チーム運営費」には、おそらくですが遠征費用(ホテルや交通費など)や球団保有の施設(練習場や寮など)が含まれるでしょう。そのほか、球場使用料は巨人が東京ドームの所有権を持っていないため発生しており、球団とスタジアム一体経営の場合はかからないと想定できます。また、「人件費」は選手や監督・コーチなどを除いたスタッフや職員の給料などを指すでしょう。

コロナ禍で求められる新しい球団経営とは

上記の池田氏が登場する記事でも言及されていますが、コロナを前提とした球団経営モデルへの転換が今後求められています。具体的にいえば、2020年時点ではスタジアムへの入場制限がされており(50%)、入場料収入に依存した球団経営では長く持たないということです。付随して、グッズ販売や飲食収入の減少が避けられず、上記内訳でいえば従来の60%を占めていた収入分に大きな影響が出ています。

2021年以降、コロナが収束し、より多くのファンにスタジアムに足を運んでもらえることを期待したい気持ちももちろん理解できますが、コントロールできないことばかりを期待していては球団経営は成り立ちません。スタジアムあるいは主催試合開催日のみに依存しない球団経営モデルを模索する必要があります。

これについてはスポーツビジネスの専門家からは「365日モデル」として新しい球団経営モデルが提唱されているので是非ご覧ください。

アフターコロナのスポーツ、鍵は「365日モデル」とコミュニティー | 未来コトハジメ

かつての球団経営が赤字で成り立っていた理由

今でこそ、プロ野球の各球団が経営努力を行い、黒字化を達成あるいは目指すことが当たり前になっていますが、かつては赤字経営が当たり前の時代がありました。当時は親会社に頼り切りの球団経営で、球団の赤字補填分が親会社としては広告費扱い、もっといえば税制的な優遇があり、球団が経営努力を行うインセンティブがなかったのでした。詳しくは、以下の記事もご参照ください。

www.itsportsbiz.work

球団経営について理解を深められる動画

最後に、球団経営について解説された動画をピックアップしてご紹介します。

横浜DeNAベイスターズ・池田純 代表取締役社長【神奈川ビジネスUp To Date】


横浜DeNAベイスターズ・池田純 代表取締役社長【神奈川ビジネスUp To Date】2016.3.24放送

ホリエモンが考えるプロ野球界の展望とは?【NewsPicksコラボ】


ホリエモンが考えるプロ野球界の展望とは?【NewsPicksコラボ】

関連書籍

【ベイスターズを5年で再生させた 史上最年少球団社長が明かすマネジメントの極意】 ///////////////////////////////////////////////////////////////////// ビジネスパーソン必読! 球団経営はすべてのビジネスに通じる。
日本のプロ野球を「(労働)経済学」の観点で捉え、年俸問題、キャリア問題、選手の権利問題、球団経営等について調査・分析。メジャーリーグとの比較分析も行う。新たな視点のプロ野球解説書とするとともに、日本のプロ野球をケーススタディとした経営、ビジネスの指南書にもなる書。
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