なぜアフリカ勢のランナーがあんなにも速いのか.
その原因や説は多く唱えられていますが,どれもこれもたったひとつのことが原因ではないと一個人として思います.
いろいろな原因が複雑に絡み合い,かつ彼ら彼女らの元々の身体能力の高さも速くなるのに働いているのだと思います.
今回は,アフリカ勢のトレーニング方法を調べると必ず出てくると言っていいほどのトレーニング“ファルトレク”を中心に解説していきます.
トレーニングに段階をつけるとは?ケニアの練習理論について?
トレーニングに段階を付けるとはどういうことかというと、「今の力に合わせた練習を行っていく」ということです。
力がないのに、ものすごくきつい練習をしてもあまり意味がありません。
今の力に合わせた練習をし、その練習レベルを徐々に上げていく必要があるのです。
その練習レベルの上げ方と練習方法についての理論が、リディアード式のトレーニングなのです。
ファルトレクとは?練習方法は?
ファルトレク(Fartlek)とは,別名スピードプレイ(Speed Play)とも呼ばれます.
アフリカ勢のトレーニングプランの中に全般を通して組み込まれているものです.
『平原,丘陵地帯,トレイル(ここでは不整地に当たる)を自由なスピードで強弱をつけながら長時間走る』
ここで重要なのが,『コンクリートなど平坦な道を走ることはファルトレクと呼ばない』ということと,『自由なスピード』という部分です.
英語の”Play”とは”遊び感覚で”との意味合いが強く,シリアスなトレーニング場面で使われるものではありません.
シリアスな場面では”session”(セッション)と使用されることが多いです.
インターバルの格下程度の認識でいいでしょう.どちらにせよ,きついトレーニングに変わりはありません.
また,インターバルの原型のトレーニング方法だとも言われています.
ジョグの中にスピードを入れる練習方法
このファルトレクは,ジョグの中にスピードを取り込むようなイメージです.
インターバルはスピードを出したレストとしてジョグを取り込みますが,考え方そのものが逆転していると思っていいでしょう.
1分の疾走区間,1分のジョグ区間を交互にして,20分間,場合によっては60分などが適切です.
専門,目標とする距離によって疾走区間時間や合計時間を調節しましょう.
ただし,ペースは定値化してはいけません.
スピードを出すときは,ペースを決めずに,“自由に”がポイントです.
「前のスピードは遅かったから次は速く行こう」とか「次はこいつに付いていこう」とか.
とにかくLet’s play という感じが大切です.
強くなる練習方法には手順・順序がある【リディアード式ファルトレク】
誰しも最初から速く強いわけではありません.
厳しいトレーニング,科学的なトレーニングによって変わっていくのです.
その強くなるトレーニングの手順に”リディアード式トレーニング”というものがあります.
6~12週間 基礎力強化
4~6週間 筋力強化
4~5週間 スピード強化
ペース感覚獲得
テーパリング
このトレーニング手順がリディアード式ランニングです.
多くのメダリストを手掛けたリディアードのトレーニングプラニングは非常に興味深いです.
Step1.有酸素能力発達のための走り込み
ここではとにかく”走りこむこと”がこと重要視されます.それも6~12週間と長期間.
リディアードが言うポイントは,
- 自分が可能な範囲で長く走る
- スピードを出す必要はない
- 毎日中途半端な距離を走るよりも長い時間の日,短い期間の日とメリハリをつける
- 息切れしない程度の強度
すでに土台ができていると思っているランナーでも案外ここからやり直すことが重要だったりします.
ポイント練習のつなぎでしかこういう基礎的な練習はないし,30kmを6分/kmペースで走る方がしんどかったりします.
アフリカ勢は早朝にきついトレーニングをして,午後は6分/kmペースで120分走ったりするらしいです.
午後は基本的に超スローで長く走るそうです.
日本ではあまりないトレーニングです.
Step2.ヒルトレーニング・筋力強化
スピード練習をこなすため,故障しないための下準備です.
また,坂を利用したプライオメトリクス的なトレーニングを取り入れることで,筋力向上と正しいフォーム,要は正しい体の使い方を身に付けます.
ここでは筋力強化が目的ですので,別途筋力トレーニングを実施するのも効果的でしょう.
4~6週間と長い時間を下準備に費やしますが,週に2回坂道でのトレーニング実施し,それ以外の日はStep1のスロージョグは継続です.
Step3.無酸素インターバル・絶対スピードの向上
Step1, Step2は継続しながら週に2回のインターバル走.
ポイントは
- LT値よりも早いペースで走る
- 無酸素状態でのランニングに耐える能力を身に付ける
- スピードの出しすぎ,インターバルの本数のこなしすぎによる故障をしないこと
とにかく,無理をしない範囲でスピードを上げたトレーニングを行うことです.これを4~5週間.
体の声をよく聞き,妥協ではない,「あと1本」と無理をしないことが重要です.
Step4.インテグレーション/持久力とスピードの統合
レースの距離よりほんのわずかに短い距離で,レースに近いペースで走ります.
また,そのペースでインターバルや,ファルトレクを行います.
ファルトレクは前述した通りです.
タイムトライアルなども効果的だとリディアードは述べています.
Step5.テーパリング
テーパリングとはレース前の調整のことです.
レース当日に調子を最善にするために行います.
- ジョグで有酸素能力を維持する
- 強度や本数を落としたスピードトレーニングやファルトレク時折混ぜる
- 体力を温存する
- 負担のかかる練習はNG
2~4週間前にはレースに向けての調整に入ります.
日本では1週間,2週間程度ですが,もう少し長めにテーパリング期間を設けることが大切なようです.
まとめ【ケニア人の練習方法】
すべての工程をこなそうとすると,5~8か月かかってしまいます.
すでに土台が完成しており,スピードトレーニング,ファルトレクから始めるんだというなら,そこから,初めてみるのもいいかもしれません.
また,これらのトレーニング方法を参考にして,自分にあったオリジナルなトレーニングをプラニングするのも悪くないでしょう.
最終的にトレーニングプランに決断を下すのは自分ですからね.