今回は、日本を代表するマーケターのひとり・森岡毅さんの本を一挙にご紹介します。マーケティングに関する本が多いですが、キャリアやリーダーシップに関する著書もあります。
森岡毅さん著の本をご紹介
P&GやUSJで数々の実績を残し、現在はマーケティングの精鋭集団「刀」を率いる森岡毅さんの本は大きく分けて「マーケティング」「キャリア」「リーダーシップ」の3つの分野があります。
マーケティング
USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 (角川書店単行本)
まずは、マーケターやマーケターを目指す方であれば必読書といえるこの本。P&Gからマーケティング責任者としてUSJに転職した森岡毅さんが、低迷していたUSJを立て直した「リアル」が描かれています。
まずはUSJが低迷していた本質的な理由を分析し、その分析に基づいてマーケティングを軸に組織横断で改革を断行します。USJ改革の裏側を通じ、マーケティングに欠かせない「戦略」や4Pといった「戦術」を学べます。
USJの象徴とされる「ハリーポッター」だけではない、マーケティング改革の数々を通じ、自身の仕事に活かせることをたくさん発見できる本です。
「日本一わかりやすいマーケティング入門書」との呼び声も高く、私も森岡毅さんの本から敢えて1冊オススメするとしたらこの本を挙げます。
USJ再生の鍵は、やはり優れた戦略にありました。「良い戦略、悪い戦略」の本では良い戦略の条件として「診断→基本方針→行動」の順につながっているとしていますが、USJに当てはめてみるとこのようになります。
この本の感想は以下の記事にまとめています。
「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」から学ぶ3つのコト – スポビズ研究所
USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫)
USJの劇的な改革の裏側には、無数のプロジェクトの成功があります。低迷していたこともあり、予算が厳しく制限されるなか、顧客目線のアイデアの数々で成功を積み重ねたUSJ。
本書では、「後ろ向きのジェットコースター」をはじめ、森岡毅さんがマーケティング思考を活かし、どのように斬新なアイデアを絞り出し、V字復活に導いたかがリアルに描かれています。
確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 (角川書店単行本)
マーケティングを軸にしたUSJの劇的な復活を、数学的な視点から非常に詳しく解説されているのが本書です。同じくP&Gで活躍した今西氏との共著で、体得してしまえばすぐにでも自社のマーケティングに活かせる実践書です。
マーケティング初心者にはやや難しく本格的な内容となっているため、マーケティングの基本を押さえてから読むことをオススメします。
USJをV字回復させた森岡毅の実戦マーケティング3部作【3冊 合本版】 (角川文庫)
電子書籍限定ですが、ここまでにご紹介した森岡毅さんとUSJ・マーケティングに関する3冊の内容が1冊にまとめられた本もあります。
マーケティングとは「組織革命」である。
マーケティングとは、商品やサービスが売れ続ける仕組みを作ること、と定義できます。つまり、売れるような商品・サービスの開発から、実際に顧客に届け、リピートしてくれるまでのプロセス全てがマーケティングなのです。
よって、マーケティング部門・部署だけがマーケティング的な考え方を持ち、実行していても成果につながるとは限りません。
本書は、組織の壁を超えてマーケティングで組織そのものを変革してきた森岡毅さんが、「マーケティング」と「組織」について解説しています。
USJで実践した数学マーケティング DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文
森岡毅さんがUSJをV字回復させた数学マーケティングは、本だけでなく論文としても寄稿されています。電子書籍化もされているので、数学を用いて顧客心理を分析する手法を詳しく学びたい方におすすめです。
キャリア
苦しかったときの話をしようか
華々しいキャリアを誇る森岡毅さんも、ずっと順調な社会人生活を送ってきたわけではないそうです。かかってくる電話が怖くなるなど、精神的に苦しくなったことも。
そんな森岡毅さんが、お子さんのために就職やキャリアなどについて書き溜めていた文章を本にしたのがこちらです。マーケターとして、あるいはビジネスパーソンとしてキャリアに悩む方にオススメです。
リーダーシップ
誰もが人を動かせる! あなたの人生を変えるリーダーシップ革命
「リーダーシップ」は、生まれ持った才能のような印象を持っている方も多いかもしれません。しかし、森岡毅さんは本書で「リーダーシップは後天的に習得できる」としています。
コロナ禍でこそなお求められる、自分や他人を活かすための「リーダーシップ」 を体系的に理解し、習得したい方にはオススメの本です。
森岡毅さんの本と併せて読みたい本
体系的かつ実践的な学びのある森岡毅さんの本ですが、特にマーケティング分野で一緒に読むのがおすすめ本をご紹介します。
それぞれの本で表現は違えど、本質ではつながってくると実際に読んでみて感じており、単なる知識に「奥行き」が生まれるのを感じると思います。
ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム
人々がなぜそのプロダクトを「雇用」するのかを明らかにするのが「ジョブ理論」で、再現性のあるプロダクト開発に役立ちます。
森岡毅さんの言葉でいえば、「ジョブ」は「What」に近いものを感じます。USJとしてどんな「What」を提供するか、これをより解像度高めて共通認識を持つために「ジョブ」に目を向けます。
たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)
こちらは、森岡毅さんの著書でも上げていた「消費者視点」を取り入れるためのより実践的な内容となっています。
マーケティングというと数字を眺めて分析する、という側面もありますが、それはあくまで「検証」であり、有効な仮説を持つには一人の顧客(N1)と向き合う重要性と具体的手法・フレームワークを解説しています。
森岡毅さんについて
マーケティングといえば森岡毅さんというイメージも強いと思いますが、P&GのブランドマネージャーやUSJのマーケティング責任者などを経て、現在はマーケティングの精鋭集団である「刀」を設立。
「マーケティングで日本を元気に」というミッションを掲げ、様々なプロジェクトにマーケティングのプロフェッショナルが携わっています。
新卒でP&Gに入社した森岡毅さん
1996年に神戸大学経営学部卒業後、グローバル消費財のP&Gに入社。P&Gはマーケター輩出企業としても有名です。「P&Gマフィア」といわれていますね。
P&Gでの話は特に『苦しかったときの話をしようか』でも語られていますが、特に最初の方は苦労もしながら、パンテーンのブランドマネージャー等も歴任しています。ビジネスマン、マーケターとしての礎はP&Gで構築されたといえるでしょう。
森岡毅さんといえば「USJ」。ヘッドハンティングで入社
P&Gでの実績もさることながら、森岡毅さんといえばUSJ復活の立役者。ヘッドハンティングでマーケティング責任者として迎え入れられます。
入社後、限られた予算のなかで「顧客視点のマーケティング」をベースに次々とプロジェクトを成功させます。このあたりは著書で存分に語られているので、是非チェックしてみてください。
マーケティング精鋭集団「刀」を設立
USJの立て直した後、USJを退社してマーケティング精鋭集団「刀」を設立した森岡毅さん。変化の激しいビジネス環境のなかでマーケティングを武器にしてほしい、という大義が込められています。
丸亀製麺や沖縄のテーマパーク、西武園など「森岡メソッド」を注入したマーケティングで大型プロジェクトを次々と展開しています。
Newspicksでは、森岡毅さんが「刀」で手掛けたプロジェクトについて詳しくインタビューしています。
その他にも、森岡毅と「刀」についての記事が出ています。
【森岡毅】沖縄テーマパークの「勝算」。刀が描く日本の未来戦略
森岡毅さん率いる「刀」での代表的な取り組みに「丸亀製麺」のプロジェクトがありますが、動画になっているので是非ご覧ください。
【森岡毅】丸亀製麺を復活させた、刀の実戦マーケティング戦略
森岡毅さんと「戦略」
森岡毅さんといえば「マーケター」というイメージが強いですが、同時に優れた「戦略家」でもあります。実際、著書のなかで「戦略」について紙面を割いて解説しています。
マーケティングを行う前提として「戦略思考」が欠かせないことの裏返しともいえるでしょう。戦略の本については以下の記事もご覧ください。
「戦略」おすすめ本をご紹介!この6冊で戦略思考を習得 – スポビズ研究所
それでは、森岡毅さんの本をまとめてご紹介します。
森岡毅さんから学ぶ、マーケターとして必要なこと
本記事でご紹介した著書にあるようなことも森岡毅さんの熱意のこもった説明から改めて学べます。
・弱みは強みにならない
・数学は「熱いハート」の暴走を防ぎ、客観性をもたらしてくれるツール
・「本能」を理解し、本能に訴える
などなど、学びの多い回だったのですが、何よりも印象に残ったのは森岡毅さんの「プレゼン」。心からそう思っているからこそ伝わる、分かりやすく熱の帯びた話ぶりが、多くの関係者を巻き込めている要因だと感じます。
これはまさに「消費者視点」でプロダクトをドライブするうえで欠かせない点ですね。