スポーツビジネスは「権利」のビジネスであるとよく言われるのですが、今回は権利のなかでも「著作権」を切り口に、権利の理解がスポーツビジネスにいかに重要かを書いてみたいと思います。
何気なく見ているスポーツ映像も「権利」を意識すると面白い
みなさんは普段どのような場面でスポーツの「映像」を目にしますか?一番分かりやすいのは、試合のライブ中継ですね。今の時代、ライブ中継ひとつをとっても地上波(最近は珍しいですが)、BS/CS、DAZNやパ・リーグTV等のネット中継などがありますよね。
他にはどうでしょう。スポーツニュースに出てくるハイライト映像、あとは球団のSNSで得点シーンやハイライト等を目にすることもありますね。
これらの映像を、大元は誰が制作して、あるいは誰が制作者を選定する権利を持っていて、どう流通させているのかを意識してみるとスポーツ業界の権利が見えてくるのではないかと思います。
かつてはテレビ局による制作・著作が一般的だった
現在との対比のために、一昔前の巨人戦が地上波で観れるのが当たり前だったときのモデルを考えてみましょう。このネット配信もなかった時代は、スポーツ中継映像はTV局が制作し、そのまま著作権も保持しているのが一般的でした。球団としても、映像の撮影・番組制作のコストを考えると、リソースやノウハウが整ったTV局を活用し、しかも放送してくれるのですからその方が良かったのでしょう。しかし、ビジネス面を考えるうえで「著作権」を球団が持っていなかったことが不便な点でした。
では、「著作権」とはなんでしょうか。
著作権とは
ネットから説明を引用するとこのようになります。
著作者が、自己の著作物の複製・翻訳・放送・上演などを独占する権利。知的所有権の一つ。
この著作権をもつことで、自身で放送することはもちろん、他の業者に権利料を対価に使用許可を与えることができる点から、この記事の文脈のなかで噛み砕くと、「著作物(映像)の流通をコントロールする権利」といえるのではないでしょうか。お察しの方もいらっしゃると思いますが、映像の流通をコントロールできるかできないかで「放映権」収入の額も変わってくるでしょう。
現在の放映権モデルはどうなっているか
上でも触れた通り、かつては球団ではなくテレビ局が映像の著作権を持っていました。ネット配信が出てくるまではこれで良かったかもしれません。しかし、DAZNのようなOTTプラットフォームが台頭すると、球団が著作権を保有していないとネット中継に映像を流すことは難しいでしょう。テレビ局からしたらネット配信はカニバリゼーションをもたらしかねず(必ずしもそうではありませんが)、OTT業者にサブライセンスするとは考えがたいでしょう。
となると、球団自身が中継映像の著作権を保有するしかありません。そこで、以前も触れた「施設管理権」の考え方をもとに、テレビ局ではなく映像制作会社に映像を撮影・制作させ、その著作権を球団が買うことによって著作権を保有する形にシフトしていきました。
▼施設管理権についてはこちら
これによって、球団が中継映像やそこから派生した映像(ハイライトや特集)の流通をコントロールできるようになり、正確な数字は分かりませんが全体の収入は増加傾向にあり、放映権収入も寄与していると見て間違いないと思います。
ここでいう「コントロール」とは、たとえば
- 放送の対象物(ライブ配信、ディレイ放送、ハイライト、編集した動画等)
- 配信する媒体先(地上波、BS/CS、インターネット配信等)
- ライセンス先(どの業者にどの範囲を、とか)
をうまく制御し、収益と流通を最適化していく、ということです。これに限らずですが、なりふり構わずどことでも契約を結べばいいかというとそうとは限らず、限定することで単価を上げる方が適切な場合もあります。
まとめ
ここまで放映権と著作権という切り口でスポーツビジネスにおける権利のお話をしてみました。しかし、これは放映権ビジネスに限った話ではなく、チケッティングやグッズ、スポンサーシップなどあらゆるビジネスに応用できる話だそうです。「権利」の重要性、ご理解いただけたでしょうか。ひとつの考え方として、「どことどこか契約を結んでいるか」に着目すると良いのではないかと思っています。
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