今では、各球団の努力により人気が再び高まっているプロ野球。
しかしながら、かつては何十億もの赤字が当たり前で、2004年の「球界再編」問題を覚えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。
今回は、これまで聞いた話や調べたことをもとに、この赤字が成り立っていた理由と球界再編問題を起点にどう変わっていったかをまとめてみます。
赤字体質が成り立っていた理由
かつては球団単体では赤字を垂れ流しており、親会社がそれを補填するというモデルが当たり前でした。なぜそれが成り立っていたのでしょうか?
言い換えると、親会社が子会社である球団の赤字を補填する理由はどこにあったのでしょうか?
ぱっと思いつくのは、球団を保有することによる露出価値ですよね。人気のない球団であっても、ニュース番組では必ずスポーツコーナーがありますし、新聞等にも結果が必ず載ります。今以上にマスメディアの影響力があったので、その露出価値をもって、子会社である球団の赤字を補填していたといえます。
そして、親会社のこのスタンスを後押ししていた制度があったようです。
それは意外なところでした。。。「国税庁通達」です。
1954年8月10日に通達された「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取り扱いについて」という国税庁長官の個別通達のポイントは下記にあります。
かいつまんで記載すると、「球団の赤字を補填した場合、それは広告宣伝費扱いとする」という内容です。
これが何を意味するかというと、間接的に「節税」できるということになりますよね。つまり、利益から税金を払うか、広告宣伝費を払うかという選択になるわけですね。
となると、儲かっている企業であれば「税金払うくらいなら広告宣伝費として球団赤字を補填して、しかも企業名がこれだけ露出されるなら悪い話ではない」となりますよね。
これが、球団が赤字でもある時期まで成り立っていた理由です。
「親会社依存モデル」の功罪の「罪」
このように、親会社としても球団の赤字を補填するインセンティブがあるので球団単体では稼ぐ必要がありませんでした。それゆえ、露出価値の点で「いかにメディアに取り上げられるか」は戦略的に考えられていたかもしれませんが「いかに収益をあげるか」については戦略を立て実行していくモチベーションは低かったはず。それゆえ、招待券のばらまき等が多かったのではないでしょうか。また、球団職員は基本的に親会社からの出向で、しかも一定期間で本部に戻ることがある程度見込まれたうえでの出向でした。つまり、球団の経営やビジネスに対するコミットメントは弱かったと推察されます。
<DeNA本社からベイスターズの社長となり、改革に成功した話はこちら>
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今の球団を見渡せば球団ビジネスでも稼ぐことが可能だといえると思いますが、この「親会社依存モデル」があったことで球団による経営努力がなされないまま、その限界点として球界再編問題を迎えます。
「球界再編」を経てどう変わったか
しかし、上記のビジネスモデルが成り立つには大前提として「景気が良く稼げている」ことが前提になります。つまり、経済状況が悪化すると親会社も球団の赤字を補填している場合ではなくなります。問題自体の詳細は今回は書きませんが、赤字経営の限界が露呈され、親会社の撤退やオーナーチェンジ、新規参入もありながら、球界全体として親会社に依存しない自立経営を目指し始めたのはこのタイミングではないでしょうか。
多くの球団が目につけたのがスタジアムの事業権に着目し始めたのもこの表れではないでしょうか。
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まとめ
今回書いたお話は遠い昔のようにも感じますが、まだまだ15年ほど前の話です。自分自身あまり得意ではないのですが、このようにマクロな視点で変遷を眺めてみるのも良い勉強になるなーと思います。
プロ野球の球団経営については別記事でも詳しく解説しているので、こちらもご覧ください。
それではまた!
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