放映権(放送権)とは ~仕組みや最近のトレンドを解説~

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ついに令和時代に突入しましたね。私にとっても初めての改元、日常の延長線上のような、元日のような不思議な感覚です。

平成は平成で様々なことがありましたが、令和ではいよいよスポーツビジネス界に参入していきたいと思っています。引き続き、自身の整理としてこのブログも頑張っていきたいと思います。

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放映権(放送権)とは

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ではでは、本題に入りましょう。そもそも「放映権」(あるいは放送権)の定義ってどんな感じでしょうか。一般的には、◯◯権というと法律等で規定されているように感じますよね。

一応、Wikiの定義を引用しておきます。

放映権(ほうえいけん)とは、主にテレビ局でのテレビ放送において、他社から借り受けたり配給されたニュース素材・放送番組や、スポーツ・イベントを独占的に放映できる権利のことを指す。ラジオ放送の場合は、放送権と言う場合が多い。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E6%98%A0%E6%A8%A9

しかしながら、これは私も初めて知ったときは驚いたのですが、この権利を規定する法的本拠はないそうです。では、どのような権利が「放映権」のもとになっているかというと、それがどうやら「施設管理権」だそうです。たとえば、球場をそもそも「所有」している、あるいは所有はしていないけど事業権を獲得し「専有」することで、放送局に対して「どこそこにカメラを設置して撮影・放映していいですよ」という権利を売って収入を得られるわけですね。要は、試合開催時の球場の「事業権」を所有していることで、放映権のもととなる素材を所有することになり、その素材を「放映権」としてテレビ局やインターネット放送局などに提供できるのです。

とすると、昨今の球場・スタジアムをチームが所有しようとする動きも頷けるのではないかと思います。

放映権とは

 

なぜ、放映権(放送権)が重要なのか? ~貴重な”ライブ”コンテンツ~

なぜ放映権が大切なのか、特に放送局側の視点に立って簡単に解説します。

従来のテレビ視聴率が低下している一方、インターネットの発達やスマートフォンの普及などでオンラインでのコンテンツが爆発的に消費されるようになっています。あらゆるコンテンツが”見たい時”に、場所に制約されず視聴できるようになっています。テレビ放送にしても、録画関連の機器が充実し、”ライブ”で視聴する機会は減っています。よって、録画放送ではCMは早送りされるのもあり、番組の広告価値が薄れています。これは放送局には死活問題です。

そのなかで、いわゆる”オンデマンド”の視聴と”ライブ”の視聴で価値が大きく異なる数少ないコンテンツがスポーツ中継です。スポーツ興行の醍醐味は、やはりその「ドラマ性」にあり、結果が分かっている試合を後からじっくり見る人は、現代の忙しい社会において少ないでしょう。バラエティー番組などと異なり、”ライブ”でこそ価値を発揮するコンテンツがスポーツ中継であり、その放映権の価値は相対的に高まっています。まだまだコンテンツ価値、そして広告としての価値も高いものとして、プロスポーツの放映権は特に海外では巨額の契約がなされており、放映権・スポーツコンテンツを巡る争奪戦が勃発しています。

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プロスポーツチームにおける放映権の位置づけ

一方、放映権の”原料”を有するプロスポーツチームにとっても放映権は非常に重要です。国内外、あるいは競技によって放映権にまつわるスキームが異なる(例:チーム別が、一括→分配か)ため、一概には球団の事業収入に占める割合はいえません。しかし、差はあれど放映権関連の収入が全体の20~50%は占めており、ビジネス面における位置づけは非常に高いといえるでしょう。

放映権はどのように活用されるか

試合中継をどのように戦略的にファンに届けていくか、これを突き詰めることが重要です。一方で、球団の収益を左右する放映権をどれだけの価格で放送事業者に売るかという点も大事です。たとえば、特定の放送事業者に対して「独占」という形で放映権を売れば、その球団のファンはその放送事業者のサービスに加入する人が多くなるため、放映権を高く売却できる一方、試合中継を届けることが難しくなります。逆に「独占」ではなく複数の事業者に対して放映権を売る場合、1社あたりの金額は安くなるでしょう。

あるいは、特定の事業者に放映権を売却したうえで、2次利用を許可するかどうかも戦略的に考える必要があります。たとえば、放送局に対して2次利用を認める形で放映権を売却し、その事業者が制作した映像をインターネット中継の事業者に利用権を認め、対価をもらうといったケースもありえます。この場合、球団としては2次利用も認めて高い金額で放映権を売却でき、かつ取引した事業者から他の事業者にも放映権が流通するので多くのファンに試合中継を届けることができます。

DAZN

この他にも、特定のエリアでのみ放映権を認める売り方(プロ野球でいえば広島カープのホームゲームは広島エリアでしか見れないなど)、ライブ中継ではなく録画のみ認めるなど、条件を設けながら流通させることもあるといわれています。

まとめると、球団収入の一定割合を占める「放映権料」を最大化しつつ、幅広いチャネルでファンに試合中継を届けることがポイントになります。

 

DAZNとJリーグの放映権契約の是非

最近の面白いケースとして挙がるのは、DAZNとJリーグの長期にわたる多額の放映権契約です。Jリーグの放映権を一括販売で10年2100億円の契約で、これが各クラブに対して分配されます。元々、スカパーがJリーグコンテンツを抱えたいたのが、DAZNに結果的に集約され、放映権の金額も非常に高くなりました。DAZNから2次利用の交渉をしていたことから、2次利用可の独占的な契約であったことが推察されます。10年の間に放映権の価値が年210億円を超えていく場合、結果として10年契約の縛りがデメリットになりえますが、基本的にはJリーグ全体の収益拡大につながると捉えてよいでしょう。

 

放映権契約のDAZN依存のリスク

日本でも国内外問わず多くのスポーツコンテンツの視聴がDAZNによって可能になっています。先ほどご紹介したDAZNとJリーグの巨額な契約もそうですが、DAZNが高額で多くのコンテンツを長期に渡って「囲い込んでいる」といってもよいでしょう。しかし、これにはコンテンツホルダー、つまりリーグやチームにとってもリスクがあります。

実際、2020年7月にはDAZNがアジア圏でのチャンピオンズリーグ(CL)の放映権解除を申し出ています。欧州サッカー連盟(UEFA)と2018年より3シーズンに渡る独占放映権契約を結んでいる途中ではありますが、新型コロナの影響で日程が大幅に変更されたこともあり、解除したい意向となったようです。ただ、コロナは「口実」として、背景には別の事情があった可能性もあるでしょう。

blogos.com

上記を受け、日本でも人気のあるCLが視聴できなくなっていて、Youtubeにも掲載されていたハイライト映像なども削除されています。

契約の内容次第ではありますが、長期で高額な放映権契約を結んでいても、途中で解除される可能性もあり、放映権収入をDAZNに依存するリスクもあるといえるでしょう。

リーグで一括販売した方がいいのか?

放映権では、よくリーグで一括管理すべきかどうかが議論されています。たとえば日本のプロ野球の放映権と、メジャーリーグ(MLB)の放映権の金額に大きな差が出ているため、MLBを見習って一括にすべき、とする意見がよく挙がっています。しかし、そもそも日米ではテレビ視聴などの習慣・環境が異なることもあり、リーグで一括しても高く売れるとは限りません。あくまで成功要因の一部を切り取っているだけであり、そのまま真似するのはナンセンスでしょう。

www.itsportsbiz.work

この記事でも解説したように、アメリカではそもそもお金を払ってテレビを視聴する習慣があるため、リーグ一括の放映権も確かに高く売れますが、各チームが地元の放送局と長期で高額な放映権契約を結び、これが球団の収益源になっています。一方、日本の地上波放送は無料で視聴することができるため、そもそも放映権がアメリカほど高く売れないのは無理ないことなのでしょう。

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放映権に欠かせない著作権の帰属について

本題とは少しずれますが、できあがった映像の著作権をどのように処理するかが大事なポイントだそうです。これがそのままテレビ局に流れてしまうと、せっかくも映像コンテンツをみすみす逃してしまうわけですね。この著作権を球団が保有しているからこそテレビ中継のみならず、ネット配信や試合映像から切り出してハイライトや特集動画を作成できるということになります。となると、著作権が球団に帰属されるような座組にすることが肝要といえそうです。

また、著作権を有していないが故に特にアウェーの試合の映像をコンテンツとして利用しづらくなっています。公式戦の半分はアウェーの試合なので、記録達成の瞬間や優勝の瞬間など、オフシーズンなどのコンテンツとして使いたくても、それが実現しづらい、あるいは余分にコストがかかってしまいます。これは放映権の一括管理にも通ずるところですが、パ・リーグは各球団がアウェーの試合でもハイライト映像をSNSなどで利用できている一方、セ・リーグではホームゲームの試合映像しかコンテンツとしてファンに届けられていない現状を見ると、放映権や映像の著作権の戦略的な設計が重要であるということがよくわかります。

放映権に関する注目ニュース

近年、国内外で放映権に関する巨額の契約がニュースになるケースが目立ちます。
 

MLBとターナー・スポーツによる7年総額37億ドルの放映権契約

すでに触れた通り、MLBはもともと放映権をリーグとしてまとめて大型の契約を結んでいますが、2022年以降も長期に渡る巨額な契約を締結しました。

メジャーがまた大型の放映権契約結ぶ…2022年から年平均1300億円超の収入へ : スポーツ報知これまでの契約と比較しても契約金額が上昇しており、改めて注目を集めています。放映権の内容としては、ポストシーズンの放送に加え、毎週火曜日のナイトゲームおよびデジタル中継の権利が含まれるとされています。また、ターナー以外にもFOXと7年51億ドルで契約しており、MLBから各球団に大きな金額が分配されます。メジャーリーグは、リーグ・球団ともに引き続き安定した運営となりそうですが、そこに放映権が果たす役割は非常に大きいことが分かります。

アマゾンも参入するスポーツの放映権市場

有料記事のため、詳細は延べられませんが、動画配信サービスの競争が激化するなか、アマゾンもスポーツの放映権に参入してきています。

スポーツ放映権ビジネスは「動画配信」が熱い!王者DAZNにアマゾン挑戦か | 激震!コロナvsプロスポーツ | ダイヤモンド・オンライン

同じコンテンツのなかでも、スポーツ中継は「ライブ」としての価値が高く、アニメや映画などとは一線を画すコンテンツです。 そのスポーツコンテンツの放映権を巡る競争や、それがリーグや球団・クラブの利益になり、チーム強化やファンサービスの向上などにつながっていくことを期待したいですね。

最後に

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