筆者と彼が出会ったのは筆者が中学3年、彼が中学1年の時だった。
その時は、今では想像もできないほど身長は小さく、手足は木の棒のように細く、簡単に折れてしまいそうなくらいだった。だから、山を走っていると聞いたときは理解が追い付かなかったのを鮮明に覚えている。一度転んでしまえば再起不能に陥りそうなレベルの細さなのに山なんてよく走っているな、と半分嘲笑、半分尊敬交じりに感嘆を吐いていた。
しかし、中学の時に一度だけ朝練と称して山に連れて行ってもらったことがある。その際に筆者の嘲りは消えてなくなった。今思えばその時から近江の神髄を目の当たりにしていたのかもしれない。
その日はたった4kmのトレイルだったが、もう二度と山には入らないと思わされるほどにしんどかったのだ。登りはどれだけきつくても死ぬ気で背中に張り付き、下りは転ばないように必死に、かつ慎重に線の細い足を追いかけた。
筆者にとっては近江は二つ下後輩に当たる。そのためどれだけ苦しくても後輩に負けられないという思いが当時は強くあった。(今は皆無)
そして、近江が高校に進学し、1年目に蔵王で開催されたバーティカルのアジア選手権で4位に入ったと聞いた。鳥肌が立った。まだ高校生なのに、そこまでの結果を残せるなんて夢にも思っていなかったからだ。続いて翌年には粟が岳で開催された日本選手権では総合3位に入った。そのレースは筆者も参加していたが、次元が違った。なんというか、生物としての体のつくりが全く異なると思い知らされた。努力ではどうにも到達しきれない位置に到達できるだけの才能があると、肌で感じた。もちろん、近江が才能だけでここまで強くなったわけではない。積み重なねた努力を筆者は知っている。怪我に泣いた年もあった。それを踏まえたうえでの才能の話だ。つまり、才能にあふれ、それを磨くだけの努力をしている。それもまた才能だ。
TEAM SKY KYOTOに所属する方々はつくづく才能に溢れすぎていると思う。
天性の才能だとかそういった類のものじゃない。頑張れる、継続できる、周囲の意見を柔軟に取り入れそれを思考の上で折り畳みアウトプットという才能だ。簡単にできることではない。強くなる秘訣が凝縮されている環境だ。
プロフィール
近江竜之介(19) 2001/9/1生まれ 京都市出身
プロ山岳ランナー / TEAM SKY KYOTO 合同会社 代表 / Adidas TERREX 契約アスリート / New-hale / coros
経歴
幼稚園、小学生時代から山遊びとサッカーに熱中しており、小学3年生時に37kmのトレイルレースである『ダイトレ』を完走。京都のロードレースの多くで優勝、大会記録などを打ち立てる。
中学入学と同時に、トレイルランニング、スカイランニング、陸上競技を本格的に始める。
3000m 9分00秒
3000m 近畿大会5位
近畿駅伝出場
2015スカイランニングジュニアシリーズ年間チャンピオン
など、数々の成績を収める。
高校入学後も引き続き、山岳ランナーとして、陸上競技者として躍進を続ける。
2017年9月アジア選手権VK 4位
2018年4月日本選手権VK 3位
2018年8月スカイランニングユース世界選手権Youth A SKY優勝、VK 2位、コンバインド優勝
2019年10月日本選手権(SKY)3位
2017年7月近畿高等学校ユース陸上競技対校選手権大会(3000sc)出場
2019年11月近畿高等学校駅伝競走大会出場
5000m 14’40
高校卒業後、プロスカイランナーを目指し、活動を始める。
以下略歴。
2020年1月千羽海岸トレイルレース(ロング)優勝
2020年7月スカイランニングVK近畿選手権 優勝
2020年10月尾瀬岩鞍VK(日本選手権兼トレイル世界選手権選考レース)優勝
2020年11月GOLDEN TRAIL CHAMPIONSHIP2020(ポルトガル)51位
2回目の国際レースで挫折を味わう。
2021年2月愛宕スカイコース 1時間54分35秒
2021年3月愛宕VK(表参道)29分12秒
2021年3月OSJ新城トレイル32k優勝
2021年3月TEAM SKY KYOTO合同会社を設立
週間練習予定
月曜 rest
火曜 朝 10kmジョグ 午後 10kmジョグ
水曜 朝 ロードバイク(100km~150km) 午後 ウエイトトレーニング
木曜 朝 10kmジョグ 午後 高強度トレーニング
金曜 朝 10kmジョグ 午後 10kmジョグ
土曜 朝 山練(20~50km)
日曜 ロードバイク100km~200km
山練が週に一回だけというは意外だ。ロードバイクの練習の頻度も高く、クロストレーニングが印象的だ。