持久的スポーツの代表として挙げられるマラソンやトレイルランニング。
こういった持久力が試される過酷なスポーツは、トレーニングの継続が必須なのはもちろんのこと、長く辛いトレーニングに耐えなければなりません。
今回はそんな過酷なトレーニングを科学的な視点から解説するとともに、科学的な視点からのトレーニング方法を紹介していきます。
ランナーに必要な能力を紹介
マラソンとトレランで必要な持久力の種類
- 全身持久量
- 筋持久力
- 心肺機能
- スピード持久力
持久力の種類として、これらのことが挙げられます。
手始めにこれらを順に解説していきましょう。
全身持久力とは?
全身持久力とは端的に言えば長時間走り続ける能力のことです。
速さは一旦置いておいて、どれだけ“連続して”走り続けることができるかという点です。
20分連続して走れる人と60分連続して走れる人ならば、後者の方が全身持久力が優れていると言えます。
長い距離では、酸素を利用して糖や脂肪を代謝しエネルギー源とする“有酸素性のエネルギー生産システム”を使用しています。
このエネルギー生産システムはパワーは少ないものの持続的に働くので、全身持久力が高い人はこのシステムの効率がよいです。
対して短い距離では酸素を使用せずに糖をエネルギーとして使用する“解凍系”と呼ばれるシステムが使われています。
いわゆる有酸素運動です。
筋持久力とは?
筋持久力とは筋肉を持久的に長時間動かす能力のことです。
死にそうなくらい息が上がっていても、足はまだまだ動くという時がまれにあると思います。
その点で全身持久力と筋持久力は異なります。
”筋繊維を長時間動員させる能力”のことを筋持久力”といいます。
心肺機能とは?
心肺機能はほとんど全身持久力のことを指します。
走っていて息が上がる原因は、“酸素を利用してエネルギーを生み出すシステムのサイクル,効率が悪いから”です。
しかしここでいう心肺機能は、息を吸って吐く行為の能力を指します。
全身持久力が低いことも心肺機能を下げる要因にはなりますが、もう一つ重要なこととして息の吸い吐きがあります。
『肺活量』という言葉があります。
これは息を吸うための筋肉、息を吐くための筋肉の度合を計測する指標でもあります。
つまりその呼吸に関する筋肉を鍛えることも心肺機能を向上させる要因になるのです。
またこれは疲労回復にも効果的な側面を持ちます。
詳しくは下記記事で解説しているので、ご一読を。
スピード持久力とは?
スピード持久力は“より速いスピード(全力に近いスピード)をどれだけ長く走れるか”のことです。
トラックランナーは特に重要視しなければなりません。
この能力は全身持久力にプラスしてスピードが要求されます。
マラソンやトラックの記録が伸びないランナーはこちらの能力を見直す必要があります。
マラソンとトレランで結果を出す科学的な練習方法を解説
全身持久力を向上させる練習方法【とにかく長く走るLSD】
全身持久力を向上させるためのトレーニングとして重要なのが“とにかく長く走る”ことです。
これは速いランナーほど軽視しがちです。
そのための具体的なトレーニング方法が以下の通りです。
- マラソンペース(/km)+2’00~2’30/kmで,120分以上走る(通称:LSD)
- マラソンペース(/km)+40~60秒/kmで,60分~90分走る
- マラソンペース(/km)+20~30秒/kmで,50分前後走る
最低でも50分は連続して走りましょう。
LSDで重要なのは“とにかくゆっくり長時間走る”ことです。
速いペースのジョグでは細かい血管にまで血液を送る余裕がないのですが、ゆっくりだと細かい血管にまで血液を送ることができます。
つまり超ゆっくりのジョグは体中の血管を発達させることが目的です。
速いランナーほどジョグのペースが速くなりがちですが、我慢してゆっくり走ることで更なるレベルアップを見込めます。
ジョグのペースが毎日同じだと使われる血管しか発達しないので、ペースにはできるだけ幅を持たせることが重要です。
速めのジョグでは心肺機能と基礎的なスピード持久力を鍛えることができます。
より実践に向けたトレーニングです。
速くなるとペースを上げることが気持ちよくなりがちですが、超ゆっくりのジョグを軽視すると、伸び悩むことになるので注意しましょう。
筆者も高校時代にスロージョグを軽視してペースを上げて走っており2年間伸び悩んでいましたが、休日などのオフ日に超ゆっくり120分走るなどを取り入れたところ、ぐんぐん伸びてインターハイの決勝にまで進出できました。
経験則から語ると、とにかくスロージョグはとても重要ということです。
筋持久力を高めるトレーニング方法【トレランやクロカンが効果的】
筋持久力を高めるにはクロカンやトレイルなどの不整地を走ることが効果的です。
理由は足の色々な筋肉を使うからです。
特定の部位だけを使って走っていると筋持久力は向上しません。
下記記事で筋持久力を高めるトレーニングを詳しく解説しています。
重要なことなので強く速くなりたい方はぜひご一読を。
筋持久力を鍛えるにはクロカンやトレイルなどの不整地を走ることで劇的に向上します。
複数の運動神経系からの出力が向上するからです。
アフリカ勢の筋持久力が異常に高いのは、不整地を走っているからという説もあるほど、不整地でのトレーニングは重要なのです。
心肺機能を高めるトレーニング方法【呼吸筋を鍛えればすべて解決】
心肺機能が低い原因として “酸素を利用してエネルギーを生み出すシステムのサイクル効率が悪いから” 、“呼吸筋が発達していないから”と前述しました。
前者は全身持久力を高めるトレーニングを継続していれば、おのずと向上してきます。
しかし呼吸筋だけは意識的に鍛えなければ向上しません。
伸び悩みに陥っているなら、呼吸筋を鍛えることを勧めます。
呼吸筋を鍛えるには専用の器具で鍛える必要があります。
筆者が強靭な呼吸筋を得るために使用したものは「エアロフィット」です。
下記記事で呼吸筋の鍛え方や鍛えることの重要性を解説していますので伸び悩んでいるランナーはぜひご一読を。
スピード持久力を高めるトレーニング方法【インターバルのスピードを上げて、レストを少し伸ばす】
スピード持久力を高めるトレーニングとして、インターバルが挙げられます.
- 400m×10
- 1000m×5
など,インターバルのバリエーションは多岐にわたります。
その中で意識すべきことが“レストの長い短いを使い分ける”ことです。
- レストが長い ⇒ インターバルの1本1本の質(速さ)を向上できる
- レストが短い ⇒ 総合的な持久力を鍛えられる
インターバルのレストで重要なのは心拍数です。
距離や時間でレストを決定するのは科学的な視点からは曖昧です。
「この心拍数まで下がったら走りだす」と言った具合にレストを決めておくのがより効果的なトレーニングです。
そのためには心拍数の測定精度が高い機器が必要ですが、最近のウォッチに付いている”光学式心拍計”は精度が高いので、それを使うといいでしょう。
まとめ【マラソン・トレランでパフォーマンスを高める練習方法】
- LSD(ゆっくり長く走る)をオフ日に取り入れる
- 速めのジョグを行う
- 筋持久力向上にはクロカンとトレイル
- スピード持久力向上にはインターバル
- インターバルのレストは心拍数を目安にする
以上、科学的な視点から考えるランニングパフォーマンスを向上させるトレーニング方法とその効果でした。
速く強くなるためには効率的で科学的なトレーニングが一番です。