【ノーサイドゲーム】ラグビー協会(日本蹴球協会)は腐敗しているのか?

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こんばんは、アラサーSEです!
本日は、先日読破した池井戸潤氏による小説「ノーサイド・ゲーム」について書きます。私は、著者がどれだけラグビーに精通しているか分かりませんし、私自身ラグビーは詳しくありません。しかし、この小説で描かれているチームやリーグ、協会、そして企業スポーツというのはかなり現実に即しているのではないかと感じました。
以下、おおまかなあらすじ(ネタバレにならない程度)と著者が「ノーサイド・ゲーム」を通して訴えたいであろうメッセージについて述べます。
 

池井戸潤氏作「ノーサイド・ゲーム」(ダイヤモンド社刊)の表紙

 

ノーサイドゲームのあらすじ

池井戸潤最新作!  経営戦略室から左遷された男が挑む――。 低迷ラグビー部を””経済的に””立て直せ!

 

ラグビー素人・君嶋がトキワ自動車のラグビーチームのGMに

舞台は、大手自動車メーカー・トキワ自動車が抱える社会人ラグビーチーム「アストロズ」。いわゆる企業スポーツのチームで、トップリーグの「プラチナリーグ」に所属している。主人公の君嶋は、経営企画室に勤めるいわゆる「エリート」であったが、
社内政治の煽りを受け横浜工場の総務部長として「左遷人事」を受けることになる。
なんと、トキワ自動車ではその総務部長がアストロズのGM(ゼネラルマネージャー)に就く伝統となっていた。GMは、フィールドサイド(チーム)とビジネスサイド(経営等)を束ねる重要な役割だ。
 

何とかチームの予算の承認を得るが・・・

GMとしての最初の仕事は、トキワ自動車本体の経営会議でアストロズの年間予算の承認を得ること。これまでとは異なる形で経営会議に参加することになった君嶋だが、そこに向けた準備や経営会議を通してアストロズの実態を把握することになる。アストロズは会社から見れば完全な「コスト」で、年間15億円ほどの赤字。会社の業績が良く、かつ創業社長の島本がラグビー愛好家であるため何とか予算承認は降りたものの、社内ではアストロズの解散や予算縮小を求めることが多いことも事実で、より詳細な情報を収集する。そもそも、君嶋自身も経営企画室の人間として数字を追ってきているため、アストロズ存続が合理的でないことは重々理解していた。
 

大学三連覇を成し遂げた監督を招聘

GM就任後、もうひとつさしあたって課題となっていたのが監督の選任である。前監督の辞任だけが決まっている状況で、ラグビー素人の君嶋が次期監督を選ばなければならない。素人なりに、しかしながらビジネスのプロとして考え抜いた結果、元々名門大学で母校を三連覇に導いた監督・柴門がOBとの対立から辞任することになったとの情報を得てアタック。過去のいきさつなども色々とあったが、大学の同級生でもあった君嶋が説得し、監督に就任。
 

あまりにもずさんなラグビー界、ラグビー協会(日本蹴球協会)

 

柴門を監督として迎い入れ、チームに関しては一安心。しかし、現状では来シーズン以降の予算も危ぶまれるなかで、君嶋はアストロズ単体の収支や所属するリーグ「プラチナリーグ」との関係など細かく情報を得ていた。
まず、アストロズには「収入」がない。
というのも、公式戦は「セントラル」方式で、ラグビー協会が集客に責任を持ち、入場料収入は実績に応じて各チームに還元されることとなっていた。しかし、肝心の観客は平均3,500人程度で、チームに還元されたことはこれまでないという。その観客に関しても、協会が集客していては集まらない(集客努力をしていない)ため、チームがチケットを買い取り、社員や地域の人に安く売る、あるいは招待しているのが実情であった。
 

地域密着でファンを増やす

アストロズ、あるいはラグビー界の抱える問題を把握した君嶋は、まずはアストロズを地域から愛されるチームにして、公式戦ではスタジアムを満員にすることを目標として施策を打ち出していくことに。特に子どもをターゲットに、地域の学校を選手がラグビーを教えに回ったり、地域のイベントに練習の合間を縫って顔を出し、触れ合う機会を増やしていった。そして、チームの成績向上も相まって観客は増加。
翌年度には自前のチケット販売サイトやファンクラブも作り、よりマーケティングを強化できる仕組みを構築する。
 

日本蹴球協会の腐敗(現実でいうラグビー協会に該当)

アストロズ単体では「改革」ともいえる数々の施策で観客動員数を大幅に伸ばし、チームの成績も向上していたものの、入場料分配の仕組みでチームには全く還元されていなかった。君嶋は、協会の集客やマーケティングに対する姿勢や仕組みそのものに対して様々な提案を行うものの、既得権益を重視する協会の重鎮を前に跳ね返されてしまう。アストロズの成功例を見て、追随するチームが出てきているものの、協会がこの姿勢では先が見えない。ラグビー界は、お金のある大企業に支えられているといっても過言ではない(年間1.5億円程度のリーグ参加料を払ったうえに、チームとしてはコストばかりで収入がない)のに、協会の考え方としては「アマチュアスポーツがお金を稼ぐ必要がない」「ラグビーという尊いスポーツに企業を参加させてやっている」。
これでは、企業の収益が悪化すればチームは切られかねないリスクが常に隣り合わせだ。
 

君嶋は、アストロズは、どうなるのか?

ここまで、チームの「ビジネス」サイドに焦点を当ててざっくりとあらすじを書いてみましたが、それに付随してチーム内でも揉めたり、社内でも君嶋VSアストロズ反対派の激しい攻防が繰り広げられています。君嶋は、上記のような改革をやり抜くことができるのか?アストロズは優勝することができるのか?
などなど、もしご興味ありましたら手に取って読んでみてください!
 
また、7/7(日)よりドラマもスタートするようです!
 

池井戸潤氏が伝えたいメッセージ

一通り目を通してみて、このラグビーワールドカップも開催されるタイミングで出版された「ノーサイド・ゲーム」を通して著者が伝えたいメッセージはこんな感じかなと思いました。スポーツビジネスの関係者でも、得られる教訓は多いのではないでしょうか。
 

 

  • 常識や慣習を疑う:アストロズでは、赤字垂れ流しの状態に対し既存のチームメンバーは疑問を持っていなかった。新参者の側面もあるが、ビジネスのプロである君嶋は問題点を見抜いた
  • 企業スポーツの抱えるリスク:会社から見れば「コスト」でしかない。チーム自身で稼ぐ力をつけなければ、いつ潰れるか分からない
  • 「アマチュアスポーツ」は言い訳:継続的に稼がなければ、存続できない
  • リーグや協会を巻き込め:1チームでできることは限られている。リーグや協会を巻き込んだ改革を。
  • 地域密着の重要性:地域から応援されるチームに。どんな人がスタジアムに足を運んでいるかを知ること(CRMなど)
 
これらは、ラグビーに限らずマイナースポーツや企業スポーツなど、広く当てはまるのではないかと思います。
非常にボリューミーでしたが、私自身もスポーツビジネスの勉強になりましたし、いきなり概念的な本から入るよりはストーリーのなかで理解しやすい「ノーサイド・ゲーム」はおすすめですね。ラグビーワールドカップも控えているということで、是非手に取って読んでみてください!

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